Dear_6

Letter 6 【 花咲く 】

4月5日。清明。
今年もこの最も清らかで麗らかさに満ちた季節がやってきました。
東京は、まさに桜満開、春爛漫を迎えています。

昨年、デビュー10周年を迎え、「雪恋」、「咲」とベストセレクト盤を作りました。
10周年という区切りにベスト盤制作という大きな区切りのレコーディングをし、
選曲・制作する中でいろいろなことを振り返る機会を持てました。
作った当時は「新曲」という看板を背負っていた曲たちも、
今や「定番曲」というベテランの看板を背負うように成長している曲もあり、
これも皆様の温かい支持あってこそたどり着いた今です。
本当にご支援、ありがとうございます。
今こうして新たに自分の軌跡と向き合ってみると、
長い時間を重ねる中で少しずつ曲の解釈も変わってきて、
自分の「一演奏家」としての成長、
そして年輪・経験を重ねてこそ培われてきた
「一人間」としての成長もそこに掛け合わされ、
同じ曲でもその演奏の色合いなどいつの間にか変化していることもあったりで、
音楽って作ってしまえばそれで終わりなのではなく、
成長していくものなのだなぁとあらためて感慨深く感じ入ることも出来ました。

アルバムというのは、写真にしても音楽にしても、まさに「記録」でありますね。
「今この時にしか存在しない息遣い」のようなものを、
そこに切り取り永久保存するようなところがあるように思います。
私は写真もいろいろ撮るのが好きですが、
写真も音楽も、「時間の中に存在し、その瞬間を切り取る」というところが
とても共通していると以前より常々思ってきました。
決してその場には留まってくれない、だけどどうにかして残したい、
そんな「永遠の瞬間」の記録であるように思います。
今このタイミングでベストアルバムをあらためて残していますが、
これも数年後には「軌跡のひとつ」として「記録の産物」となることだろうなと思います。

時間というのは、つくづくその場には決して留まってはくれないものです。
同じ時間は二度となく、どの地点もすぐ後にはもう「今」ではなくなってしまう。
その地点の積み重ねが道を作り、「時」を「時間」に変えていく。
時間を積み重ねた先にある地点から振り返れば、
今いる地点もそれは全部途中経過点のひとつだなぁと思います。



厳しい時代をみんなが試行錯誤しながら頑張っている。
一生懸命答えを探して、道を探して、光と花を求めて生きている。
苦しい時、いっぱいだよね。
こんなに頑張ってるのにたどり着けない、
一生懸命伝えようとしているのに届かない・・・
だけど、それもみんな途中経過だよ。
諦めた時点で、終わらせてしまった時点で、それは終わる。
「終わる結末」を想定してシナリオを書けば、それは終わっていく物語になるし、
「たどり着く未来」を想定してシナリオを書けば、
どんなに困難があろうと、どんなに傷つこうと、こじれようと、
どんなに終わったように見えようと、
それはすべてそこへたどり着くまでの紆余曲折「途中経過」のひとつなんだ。
たどり着きたい幸せが大きくて素晴らしいものであればあるほどに、
そこへたどり着くまでの間には
それだけの大きいこと、困難、苦境を超えなければならない。
時間もいっぱいかかる。
根気もエネルギーもいる。
途中で挫折してそこで終わらせてしまえばそれは未完成のまま終わる。
だけど、そこで続けようと思う気持ちがあれば、そこには確実に「続編」というものが
存在する。
続ければ、続けられさえすれば、それは必ずもう一度動き出す。

続けなければ伝わらないし、届かないし、たどり着けない。
この「負けずに続ける」ということが、人間はどうにも最も難しいことのひとつなのだけれど
どんなに苦しい中であろうとも続けること、希望を捨てず歩き続けること、
時間をかけて積み重ねてきたその必死な想いが伝わった時には、
きっとこんなに胸を打つことってないよ。

「花」はいつもは咲いていない。
そしていつまでも咲いていない。
だからこそ尊い。
咲きたいと願う。
咲こうと強く思える。
成長する夏を乗り越えて、葉を落とす秋を乗り越えて、
そして厳しくて苦しい冬を乗り越えて身につけた真の強さや願いが
花を咲かせるんだ。

「花咲く未来」
それはきっと、信じて積み重ねることでしかたどり着けない。
自分の力や未来、届けたい人たちの心、神様が持たせてくれた運命・・・
信じることは勇気がいるし、疑うことの何倍もエネルギーがいる。
だけど信じきらなかったら絶対に花なんて咲かない。

デビューから10年を越えて、
作って来たすべての楽曲もアルバムもライヴも、
全部咲くための過程、咲くための小さなステップの数々でした。
咲くために今日も歩き続けています。
たどり着きたいから歩く。
毎日が坂道です。
人生って、どうしてこんなに坂道ばかりなんだろうね。
きっと生涯坂道なんだろうと思う。
だけど、そういう道を越えて歩き続ける人の音楽を私は作りたい。
同じように不器用に迷いながら、弱さと闘いながら、
一生懸命答えを探して歩く人たちを
支えたり励ましたり分かち合ったり癒したりしながら
そうやって一緒に頑張って歩きたい、
そんなピアノアーティストとして皆様に寄り添いたいです。


どんな花咲かせたい?
私は、赤い花を咲かせたいです。
いつかきっと咲かせたいです。


花夢が空一面に咲き誇る清明の日に・・・

(2010年 卯の花月 五日 )



                        かしこ


                              日吉真澄






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IMG_8334.JPG赤いアネモネ。最近この花がとても好きです。4月4日の誕生花。花言葉は、「儚い希望」「苦しい恋」「君を信じて待つ」「君を愛す」「真実」「期待」。ギリシャ語のアネモス(風)が語源だそうで、多くの種は風の当たるところで生育する。風に立ち向かって咲き、そして風と共に散る花。英国では「風の花(Wind Flower)」と言われるのだそうです。風の中でそれでも信じて待ちたい未来はどんな明日?